今年(2026年)の東大の英語問題(1番A:内容要約)は、数学同様、格段に難しくなりました。
うちの生徒さんでも1番はできなかったと言って、試験から戻って来て嘆いていました。
今回は2度にわたって、この英文の読み方・要約の仕方を解説します。
まず問題を見てください。
精神分析psychoanalysisの創始者、フロイトに関する以下の英文を読み、その内容を70~80字の日本語で要約せよ。句読点も字数に含め、「フロイトの著作」から記述を開始すること。
Freud was a writer who has inspired passionate reading; which, of course, has continued in the resentment and enjoyment with which he is still read. Normally, when people don’t like a writer, they simply stop reading him, and there is no fuss about it. When people don’t like Freud, they can’t stop both reading him and not reading him, and expressing an opinion about him; they can’t just let him go. ‘Once psychoanalysis has held one in its grip,’ his colleague Ludwig Binswanger wrote to Freud in 1924, ‘it never lets go again’. It is not that psychoanalysis holds people in its grip, it is that people grip on to it (as a hate-object, as a love-object, but not usually as an irrelevant object).
What is so haunting about Freud’s writing? For some people, Freud’s writing was the kind of reading experience that was (and is) more akin to a conversion experience. “The psychoanalytic revelation,’ Thomas Mann wrote in his speech of 1936 on Freud’s eightieth birthday, ‘is a revolutionary force. With it a bright suspicion has come into the world, a mistrust that unmasks all the secrets and schemes of our own souls. Once awakened and on the alert, it cannot be put to sleep again. It penetrates life, undermines its raw naïveté, takes away our passion for ignorance … educates the taste for understatement, as the English call it — for the deflated rather than for the inflated word’. It is among the paradoxes of Freud’s writing that he inspires us by deflating us; that his bright suspicion can make our lives, in their very disillusionments, more amusing, more sexually awakened, more charged with interested and interesting meaning. Understatement reminds us that there is something under our statements. Something at work, and at play. In Freud’s description of what we are like, it is our desire for knowledge that animates us; and it is our passion for ignorance about ourselves that is so time-consuming, so life-consuming. The psychoanalytic revelation that is a revolution suggests, at its most minimal, that there may be an infectious energy about Freud’s writing. It can make people excessive in their responses.
(Adam Phillips, “Introduction,” The Penguin Freud Reader を一部改変) なお、(注)は省略しました。
今回は、英語の問題としてではなく、和訳された日本文を要約してみるところから始めます。
下記の和訳(日本語)を読んで、果たして要約ができるでしょうか。
和訳
フロイトは、読者に強烈な読書体験を引き起こしてきた作家であり、その情熱は、今なお彼が読まれる際の反発と享受の両方の中に生き続けている。
普通、ある作家が気に入らなければ、人はただ読むのをやめるだけで、そこに特別な騒ぎは生じない。
しかしフロイトの場合、嫌っている人でさえ読むことも読まないこともやめられず、彼について語ることもやめられないため、結局、彼を放っておくことができない。
「ひとたび精神分析に心を捉えられると、二度とそこから逃れることはできない」と、同僚ビンスワンガーは1924年に書いている。
だが、精神分析が人を捕らえているのではなく、むしろ人が精神分析にしがみついているのである(それも愛や憎しみの対象としてであって、無関心な対象としてではない)。
では、フロイトの著作の何がこれほど人の心にまとわりつくのだろうか。
ある人々にとって、フロイトを読む経験は宗教的な改宗体験に近いものだった(そして今もそうである)。
「精神分析という啓示は革命的な力である」とトーマス・マンは述べている。
精神分析によって、鋭い疑念――すなわち我々自身の魂のあらゆる秘密や策略を暴き出す不信――がこの世界にもたらされた。
それは一度目覚めて警戒状態に入ると、もはや再び眠らせることはできない。
それは人生の内部にまで入り込み、その素朴な無邪気さを掘り崩し、無知でいたいという欲望を奪い去り、さらに誇張ではなく抑制された言葉を好む感覚を育てる。
フロイトの著作の逆説の一つは、我々を抑え込むことによってかえって活気づける点にある。すなわち、その鋭い疑念は、まさに幻滅を通じてこそ、人生をより愉快で、より性的に目覚めた、意味に満ちたものへと変えるのである。
控えめな表現とは、私たちの言葉の下に何か別のものが潜んでいることを思い出させる。
そこでは何かが働き、同時に戯れているのである。
フロイトによれば、人間を動かしているのは知りたいという欲望である一方で、私たち自身については知らずにいたいという欲望こそが、膨大な時間と人生そのものを消費させているのである。
この「革命としての精神分析の啓示」は、控えめに言っても、フロイトの著作に一種の伝染的なエネルギーが宿っている可能性を示している。
それは人々の反応を極端なものにしてしまうのである。
まずは一文ごとの趣旨を汲み取るところから始まります。
→は、「要するに‥という意味」の符号
👉は、「つまり言い換えれば」の符号
普通は、本がつまらなければ読むのをやめる。でもフロイトは違う。(→嫌いでも読むのをやめられない)
精神分析が人をつかんでいるのではない。(→人のほうが精神分析にしがみついている👉つまり「やめられない理由は、人間の側にある)
フロイトを読むことは、(→宗教の改宗のような強烈な体験になる👉ただの読書ではない)
フロイトは人の心の中を暴く(👉自分の本当の姿を見せられる)
その結果、
・純粋だった見方が壊れる
・無知のままでいられなくなる(👉つまり、知らなくてよかったことを知ってしまう)
フロイトは人をがっかりさせるのに、むしろ人生を面白く、活発にする(👉傷つけるのに、目を覚まさせる)
人間には2つの気持ちがある
・知りたい(知識への欲求)
・でも自分のことは知りたくない(無知でいたい)
フロイトは、その「知らないふり」を壊す。だから、
・不快になる
・でも目が離せない
たとえ日本文を読んでも、この程度のあらすじというか、おおまかな文の構造が正確に捕捉できないと、英文を読んでもちょっと無理かもです‥。なぜなら、実際は英文を読みながらこのような言い換えを「英文を読みながら行っていく」わけです。そもそも、文章の内容の理解とその言い換え、そして自分の言葉で表現できる力、その辺を、しっかり確立しておく必要がありますね。
結局、あらすじはこんな感じでいいかと思います。
フロイトの文章は → 人の心を暴いて幻滅させる →しかしそのことで人を目覚めさせる
→だから強く引きつける
以上から、おおよその要約例は次のようになります。
「フロイトは、自分の本当の姿を見せてしまうので嫌なのに、気になって読むのをやめられない作家である」
しかし、英文をもう少し正確に読むと、このあらすじでは答案として通用しません。
次回にまた。